電動アシスト自転車選びを簡単にする5つのポイント

  • 電動アシスト自転車選びを簡単にする5つのポイント - -
電動アシスト自転車の発祥は日本ですが、残念ながらその多くの製品はデザイン性に欠けるためサイクリングにファッション性を求める人は食指が動きません。
有名なブランドがデザインした製品が大挙として日本のマーケットに進出していますが、価格は驚くほど高いものが少なくありません。
しかし、有名ブランドを盲信せず、見るべきポイントをきちんと理解した場合、あなたを満足させる適切な価格の電動アシスト自転車を選ぶことができるはずです。
ここでは、電動アシスト自転車を選ぶ際の5つのポイントについてご説明致します。

  • すでに普通の自転車があるのに、なぜ更に電動アシスト自転車が必要なのか?
既に普通の自転車を持っていて、運動のために自転車に乗っているのに、なぜ更に電動アシスト自転車が必要なのか?と疑問に思うサイクリストは少なくありません。

これは多くのスポーツ自転車ブランドが当初揶揄して話していた事と同様で、今や電動アシスト自転車を十分にラインナップに取り揃えていない自転車ブランドは、自転車マーケットからの深刻な衰退を余儀なくされています。
これらのブランドの普通の自転車の売れ行きが上向き始めたのはCOVID-19の流行が深刻になってからです。

上述の市場の変化を見るにサイクリング愛好家であるあなたには電動アシスト自転車の購入を検討する必要があると思います。
なぜなら、電動アシスト自転車には運動へのニーズを満たすことはもちろん、これまで考えられなかったようなチャレンジやライドに挑戦することができるからです。
また、移動手段やレジャーに自転車を利用している人にとって、電動アシスト自転車が持つ利便性を試してみることは少なからず重要なことだと思います。

  • 電動アシスト自転車の構成
電動アシスト自転車の選び方の話に入る前に、まずは普通の自転車には無い電動アシスト自転車の構成要素について理解しましょう。

1) モーター+制御システム
基本的には前輪駆動(ハブモーター)か後輪駆動(ハブモーター)か、ペダルセンターかトルクセンターによるミッドモーターに大別されます。
マーケットの傾向としては、初期の24V200Wのモーターから現在の主流である36V250W、北米市場では48V500W、750Wの大型のモーターが使用されています。
モーターの電圧は最大積載重量に関係しています。
北米では120kgを超えるサイクリストも珍しい事では無いため、北米マーケットがこれだけ大きなパワーのモーターのニーズがある理由は説明の必要が無いでしょう。

一般的にハブモータードライブは低価格モデルに採用されます。
これは、ハブモーターが通常のハブの代わりとなるため、トルクセンサーやより複雑な制御システムのプログラミングなどのコストがかからないためです。
また、電動アシスト自転車へのメーカーの参入障壁も比較的低くなります。

しかし、多くのサイクリストに好まれているのはトルクセンサーを搭載したミッドマウントモータードライブです。
ペダルを踏んだ力を検出したトルクセンサーの情報を制御システムのプログラミングが計算し、バッテリーにどれだけの電流を流してモーターを駆動するかという指令を出します。
トルクセンサーがあるのとないのとでは、何が違うのでしょうか?
トルクセンサーがない場合、電動アシスト自転車はクランクギアの回転によってケイデンススピードとアシストパワーが使えるかどうかの情報を制御システムに伝え、モーターに制御アシストレベルの大きさを伝える操作をします。
このようなロジックは、ライダーが本当に必要としているアシストを完全に反映したものではありません。
例えば坂道ではあまり速くペダルを漕がないが、より大きなモーターアシストパワーが必要です。
しかし、そのためモーターが過剰にアシストされ、モーターのパワーに足がついていけず、空回りなペダリングを引き起こす可能性があります。

一方、トルクセンサーを搭載する電動アシスト自転車は、ペダリング時のパワーを検知することで、モーターが駆動するためにバッテリーが出力すべき電流量を制御システムが計算し、アシストレベルやモーターの補助量をコントロールする事ができます。

簡単に言うと、トルクセンサーを搭載した電動アシスト自転車は、空回りペダリングの不快感が無いだけではなく、効果的に航続距離を伸ばす事もできるため、よりスマートな自転車と言えるでしょう。

現在のマーケットには様々な形式の制御システムが存在しています。
パーツの変形でトルクの大きさを判断するもの、チェーンの張りの変化により判断するもの、ペダル上の電子センサーで検知するものなどです。

現在最も洗練されているものはペダル上の力作用からデータを収集する形式です。
ここでは検出センサーが片側か両側かも重要なポイントになります。
ペダルの外観からでは片側センサーか両側センサーか判断するのは難しいため購入時には「試乗」することが重要です。

前輪駆動の電動アシスト自転車は最も価格を抑えて設計できるモータータイプですが、実用に即さない設計や使用上のロジックに反しているため筆者はあまりお勧めしません。

最も評価が高いのはデュアルトルクセンサーを搭載したミッドマウントモーター形式です。

予算が足りないようでしたら、後輪駆動形式も選択肢の一つです。
トルクセンサー付きの後輪駆動モデルがあれば申し分が無いでしょう。

2) バッテリー
バッテリーの構成部品には、セル、バッテリーマネジメントシステム、ニッケル板+ケーブル+コネクター、固定金具+保護スペーサー+ハウジングフレームが含まれます。
上記の構成部品に加えて、バッテリーの品質を左右するもう一つの重要な要素は、封止・検査工程の精度です。
セルの品質は、バッテリーの使用効率、安全性、寿命を決定する基礎的な要素です。
パナソニック、サムソン、LGなど、世界有数のメーカーのセルを選ぶことをオススメ致します。
あまり知られていないメーカーのセルを使用すると、バッテリーのコストを40%以上削減できますが、代償としてバッテリーの使用効率と寿命が大幅に損なわれ、
よく耳にするバッテリーの爆発や発火の原因にも繋がります。

過充電、過放電、低温・高温保護、電荷均衡などは、いずれもバッテリーマネジメントシステムの安全性において不可欠な要素である。
セルの導電体であるニッケル板の純度は、円滑な電流の流れに影響します。
また、ニッケル板とセルの確実な溶接も重要な要素である。
接続ケーブルの線材、コネクタのポカヨケの有無、防水設計もコストと同様に重要な考慮事項です。
固定部材はアライメント後にすべてのセルを連結し所定の位置に固定する部品で、動作時の振動や充放電時の温度による熱膨張・収縮によりセルがずれたりぶつかったりするのをスペーサーと共に防ぎます。
ハウジングフレームはバッテリーと制御システム、モーター、ディスプレイモニター、自転車を構成するインターフェース等々を繋げるバッテリー全体の鎧です。
近年、マーケットでは埋め込み一体型デザインが主流となっています。
最後に封止・検査工程がありますが、封止と検査を一定の順序や手順に応じて行わなければ、アフターサービスに多大なコストが発生する事になります。
バッテリーパックの不具合が主な原因で黎明期には数多くのメーカーが業界から姿を消しました。

定格規格表示
24V(ボルト)15Ah(アンペア/時間)であれば、定格規格は360Wh(ワット/時間)(24*15)
36V(ボルト)15Ah(アンペア/時間)であれば、定格規格は540Wh(ワット/時間)(36*15)
48V(ボルト)15Ah(アンペア/時間)であれば、定格規格が 720Wh(ワット/時)(48*15)
ただし、多くの製品では、満充電時の最大定格が24Vは29V、36Vは42V、48Vは54Vとして計算します。
つまり、
24V(ボルト)15Ah(アンペア/時間)の場合、435Wh(ワット/時間)(29*15)
36V(ボルト)15Ah(アンペア/時間)の場合、630Wh(ワット/時間)(42*15)
48V(ボルト)15Ah(アンペア/時間)、810Wh(ワット/時間)(54*15)となります。

多くのブランドは、60km、80km、100kmといった航続距離を表記しています。実は、バッテリーの容量以外にも、次のような要素が航続距離に影響します。
  1. 荷重:自転車の重量+ライダーの体重+その他の荷物の重量、荷物が多いほど消費電力は大きくなります。
  2. 道路状況: 登り坂の距離や勾配は、消費電力に影響を与える主な要因の1つです。
  3. アシスト使用習慣:多くのライダーは、必要であろうとなかろうとアシストレベルをずっと最大にして使用するため、バッテリーの消耗が更に早くなります。

3) ディスプレイモニター
ライダーはこのディスプレイを使って、電動アシスト自転車の電気制御システムをコントロールしたり、速度、アシストレベル、バッテリー残量など、バイクの現在の状態を知ることができます。

モニターには2種類あり、基本的にバッテリーの残量とアシストレベルをランプの点灯だけで確認する安価なモデルのバイクに採用されるLEDメータータイプと、上記のデータがより正確に表示されるほか、故障コードの表示や一回の走行距離の記録などが表示可能な上位モデルであるLCDメータータイプや更に上位のカラースクリーンタイプがあります。

以上のような電動アシスト自転車の基礎知識を踏まえて、自分に合った電動アシスト自転車を選んでいきましょう。
筆者は、5つの検討事項をまとめてみましたので、是非参考にしてみて下さい。

1. 自転車を使いたい場所、欲しいカテゴリーの車種を見つけよう。
従来の自転車と同様、まずは使用の用途を考える必要があります。
電動アシスト付きのロードバイクを選びたいのか?
それとも電動マウンテンバイク?
それとも多くのロードバイク・マウンテンバイク愛好家のように、都市部やレジャーでの利用が多いのでしょうか?

それぞれの自転車のデザイン、設計、パーツ構成が大きく異なるため、この大きな方向性を明確にすることが重要です。
また、電動アシスト自転車もしくは電動自転車では、電気系統の設計上のアレンジが異なります。例えば、モーターの性能、仕様、制御システムのアシスト比率、アシストパワーの即時・猶予設定の長さ、バッテリーの容量、モニター表示の状態などです。

そのため、どのような環境・用途で電動アシスト自転車を使用するか、おおよそのイメージを持っておくことが重要です。

2. 信頼性の高い電動システム、モーター仕様・制御システム・ディスプレイ
前輪駆動システムは、価格は最も魅力的ですが最もオススメできません。
電動アシスト自転車や電動自転車は主に自転車の中央部や後部に力の負荷がかかり、ペダルやチェーンやベルトで伝達されるのに対し、前輪駆動モーターの動力はこれらの伝達機構の中に存在しません。そのため登り坂や滑りやすい路面では前輪駆動システムに不向きです。

後輪駆動システムはまだ手頃な価格のため現在マーケットの主流を占めています。
電動自転車の設計の観点で言えば、ダイレクトドライブのコンセプトを持つ後輪駆動は素晴らしい選択とも言えます。

電動アシスト自転車の設計上、ペダルに入力された動力はクランクチェーンリングから始まり、チェーンやベルトを通じて後輪に伝わります。
後輪で発生したモーターパワーはチェーンを通じて前方のペダルに繋がり、駆動力に変わります。
モーターパワーが人間のペダリングパワーより大きい場合、ペダリングの空回りの現象が起こります。
ミッドマウントモーターは、現在のマーケットで最も評価が高いです。
ペダリングの力の大きさを検知してモーターのアシストパワーを決める機能をペダルセンサーは搭載していて、人間にとって最も使いやすい構造となっています。
現在のマーケットで選択できるモーターシステム規格の適用範囲を表にまとめましたので、ぜひ御参考下さい。
トルクセンサーデータを搭載したコントロールシステムとLCDディスプレイモニターは加点ポイントです。

3. バッテリーの安全性を理解し必要な航続距離を見極める
気に入った電動自転車のバッテリーセルが評判が良く信頼の置けるブランドのものなのか、バッテリー保護システムはどうなっているのか、安全性を構成するうえでの最も重要な要素になります。

そして電動アシスト自転車をどのように使いたいのかが決まれば、フル充電でどれくらいの航続距離を走れるのかがわかると思います。
上述の航続距離とバッテリー容量に影響する要因の説明と以下のデータを参考にして、自分のニーズに合ったバッテリー容量の電動アシスト自転車を選んでみてください。

4. 構造的安全性の適切さ、フレーム-フォーク-ホイール
上述の検討項目は、いずれも自転車の電動部分に関連するものです。
しかし、自転車本体の部品で考慮しなければならない点は何でしょうか。
構造上の安全は最も重要です。
従来の自転車の設計では、後付による電気システムやバッテリーなどの重量やその他の動力、悪路走行やブレーキによる応力などに対応していない部分が多くあります。
したがって、従来の自転車に後付けで電気モーターを搭載する、いわゆるDIYシステムの購入は、筆者は最もオススメできません。

構造的な強度という点では、次のようなことに注意する必要があります。

フレーム:従来の人力駆動のシングルバテッド設計のシティサイクルや、高級スポーツバイクのような軽量なフレームは、モーターシステムを搭載しても十分な安全性が確保できるかどうか再検討する必要があります。      

フォーク:フレームに加え、フォークに要求される強度も見逃せません。
特に目に見えない部分のアルミ製コラムには十分注意が必要です。

ホイール:リムの強度においては、シングルウォールリムの使用はオススメできません。
モーターの仕様に合わせて、スチールスポークを従来の自転車で使用している14Gから13G、あるいは12Gにアップグレードすることをオススメ致します。

5. 制動力は十分か?
電動アシスト自転車の中には、コストの関係でVブレーキを搭載している場合がありますが、制動力を心配するユーザーは少なくないと思います。
電動アシスト自転車はペダルを止めるとすぐにアシストモーターが止まりますが、それでも対応するモーターの慣性制動力を満たす必要があるため、必然的にディスクブレーキという選択肢を筆者はおすすめ致します。

結論:
かつて海外の自転車専門誌は、将来的にハイエンドのレース用自転車以外はすべて電動システムを搭載するようになるだろうと予測していました。
そこまで極端な見通しはありませんが、坂道の多いサイクリングやロングライドでの電動アシスト自転車の必要性を私は認識しています。
電動アシスト自転車は、サイクリングをより便利で楽しいものにするのに間違いありません。
以上の5つのポイントを読んで頂ければ、価格を優先した自転車選びはもう考えにくいと思います。
安全性以外にも、収納性や実用性、ホイールサイズなども考慮すべき要素です。

以前、ヨーロッパのクライアントから製造委託された自転車のロゴに「要好看, 再好騎(まずは見た目で次に性能)」という意味の言葉を並べていて、驚いたことがあります。
これは、日本の電動アシスト自転車が日本では10年前から人気があるのに、なぜ国際マーケットで普及しなかったのかを証明しています。
ヨーロッパデザインの電動自転車はわずか10年ですでに世界の流行の最先端に到達しました。

このことからも、先に述べた5つのポイントと同様に、デザインも重要な要素であることがよくわかります。
電動アシスト自転車が真剣に欲しくなってきましたか?
是非スタイリッシュに乗りこなしてください!